2013 年 19 巻 1 号 p. 33-37
症例は39歳男性.2003年よりアルコール性肝硬変にて加療中,2004年から食道静脈瘤の加療歴を複数回認める.2009年3月の内視鏡検査では食道静脈瘤は認めないが,EUSにて上切歯列より37cmの胸部下部食道に径8mmの貫通血管を認めていた.腹部造影CTにて著明な傍食道静脈の発達を認め,貫通血管も確認された.2010年8月吐血にて入院となった.緊急内視鏡にて貫通血管からの噴出性の出血を認めた.内視鏡的静脈瘤結紮術(endoscopic variceal ligation : EVL)を試みるも吸引結紮できず,ショック状態となった.S-B tube(Sengstaken-Blakemore Tube)を留置し人工呼吸管理とした.翌日出血部位にヒストアクリル®とリピオドール®混合液(83%ヒストアクリル®溶液)による内視鏡的硬化療法(endoscopic injection sclerotherapy : EIS)を行った.硬化療法後止血し全身状態は安定し,抜管し退院した.治療12か月後の内視鏡検査にて治療部位は瘢痕化しており,静脈瘤の再発なく,EUSにて貫通血管の消失を確認した.