組織培養研究
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厚生省細胞バンクにおけるヒト組織・細胞取り扱い倫理問題への取り組み
増井 徹祖父尼 敏雄石井 美智子今西 由紀夫安井 英明高田 容子林 真水沢 博
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2000 年 19 巻 1 号 p. 1-15

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抄録

医学・生物学研究の中でヒトの組織・細胞を利用した研究が重要な位置をしめるようになってきた。そして、社会意識の変化に対応するために、ここにきてヒト試料を利用する際の倫理問題に関する政府ガイドラインの作成が急がれており、2000年中には複数の省庁で作成された7つのガイドラインが並列に存在する状況となる。研究現場では、いくつかのガイドライに跨る形で研究を行なわなければならないことになり、倫理審査が困難な状況となることも予想されている。そこで、この分野の社会認知を得るためにも、研究体制が整えられようとしている今こそ、基本的事柄に立ち還えることが重要であると考えている。
我々は、厚生科学審議会先端医療技術評価部会の1998年12月の答申(1)と日本組織培養学会の倫理問題検討委員会(委員長、松村外志張、2)報告を踏まえて、ヒト試料の公的研究資源化のプロセスについて検討を試みてきた。本稿では厚生省細胞バンク(JCRB細胞バンク)の取り組みをケーススタディーとして報告する。
社会からの認知を得るためには研究活動・研究者に対する信用が不可欠であるが、現実には医療・研究に関する信用が失われている。この現状を認識して、ヒト試料の研究利用に関する社会的認知を目指した独り善がりでは無い活動を続ける必要性を痛感する。基本姿勢としては、ヒト試料を扱う際の危険性や問題点を踏まえて、情報公開の原則に基づいた公の議論を行なう姿勢を持続することが重要であると考えている。本稿も情報公開の活動の一環と位置付けている。

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© 日本組織培養学会
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