絹繊維の形成機構を明らかにするため, 凝固状態にある絹糸腺内容物の複屈折を測定するとともに, 吐糸形成後の繭糸の繊度と複屈折と機械的性質との関連を考察した。前部糸腺と中部糸腺との境界部位を起点として前部糸腺から10mm離れた箇所で凝固絹の複屈折は目立って増加した。蚕の吐糸速度は, 最外層から400~500mの中層部位付近で最大の1.2cm/secであった。繭糸の強度は最外層から700m付近で最小となり, 同部位での蚕糸の複屈折も最少値を示した。繭糸の伸度は外層より700mに到る過程で急激に減少し, その後の変化は平坦となった。