カイコの性はW染色体上に仮想的に座乗する雌決定遺伝子Femによって決定すると考えられている。また、性決定機構の下流にある遺伝子Bmdsxは産卵後約90時間目でそのmRNAの性特異的なスプライシングを確立するので、それ以前にFemおよびその下流の性決定遺伝子が機能していると考えられる。そこで性決定に関与する遺伝子群を同定するために、カイコESTデータベースに記載されている約6000個の遺伝子を搭載したcDNAマイクロアレイを用いて性特異的なRNAを経時的に探索した。限性黒卵系統の受精卵、産卵後36から96時間目のものを用いてスクリーニング行ったところ、約400種類の遺伝子について2倍以上の雌雄差を検出した。相同性検索の結果、その中にはRNA結合タンパク質をコードする5種類の遺伝子とDNA結合タンパク質をコードする2種類の遺伝子が含まれていた。これらは性特異的な遺伝子発現調節へ関与している可能性が示唆され、現在より詳細な発現解析を行っている。また、36時間目以前の時点における受精卵を使った雌雄の比較も進行中であり、その結果も合わせて報告したい。