日本蚕糸学会 学術講演会 講演要旨集
日本蚕糸学会第73回学術講演会
セッションID: 334
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変態期のカイコ翅原基における遺伝子発現プロフィールの観察
*大手 学三田 和英川崎 秀樹関 元昭小林 正彦嶋田 透
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抄録

 完全変態昆虫であるカイコの翅原基は、変態期に形態を急激に変化させ成虫組織へと成長する。このメカニズムを解明することを目的として、翅原基の蛹化の過程での遺伝子発現プロフィールをマイクロアレイを用いて観察した。実験は5齢4日目から蛹化直後の13時点で2__から__4回繰り返し、計38回行った。その結果、マイクロアレイ上の5128遺伝子のうち3059遺伝子について十分な発現パターンが得られた。それらの遺伝子について解析を行った結果、発現量が変動する遺伝子を686個同定した。それらは、体液中のエクジステロイド濃度の上昇する時期に増加する遺伝子が77個で、現在までに報告されているBHR3、Urbain、キチナーゼ遺伝子などを含む他、タンパク質の分解、基底膜の形成、糖代謝、アミノ酸代謝、アミノ酸輸送、電子伝達などに関わる遺伝子に相同性の高いものを含んでいた。エクジステロイドのピークの後に増加してくる遺伝子は179個同定され、クチクラの形成、膜輸送、タンパク質輸送、ATP合成、ステロイド代謝などに関わる遺伝子に相同性が高かった。また、発現量が減少する遺伝子も234個あり、核酸の代謝、基底膜の形成、ヘパラン硫酸合成などに関わる遺伝子に相同性が高かった。

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© 2003 社団法人 日本蚕糸学会
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