2013 年 20 巻 1 号 p. 14-17
近年日本人の肥満人口が増加し,肥満症やメタボリックシンドロームの増加が問題となっている。1994年のレプチンの発見以来,食欲・体重調節機構の解明は大きな進歩を遂げた。摂食行動と消化管運動密接に関連しており,摂食促進系物質である神経ペプチドYやグレリンは上部消化管運動を亢進させ,摂食抑制系物質であるCRFやウロコルチンは上部消化管運動を抑制させることが明らかとなっている。今回われわれは,摂食抑制作用をもつNesfatin-1をマウスの脳室内に投与し,摂食抑制作用を確認するとともにマノメトリー法を用いて胃十二指腸運動の測定を行った。Nesfatin-1投与後,食後期における胃十二指腸運動は抑制された。Nesfatin-1の摂食抑制作用および上部消化管運動抑制作用に関しての制御機構の解明は未だ不十分である。今後さらなるメカニズムが解明されることにより,肥満や糖尿病,機能性胃腸症や食行動異常などの治療への臨床応用の可能性が期待される。