日本小児血液・がん学会雑誌
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How I Treat 2
小児白血病・悪性腫瘍治療時における侵襲性真菌感染症
福島 啓太郎
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2021 年 58 巻 5 号 p. 414-418

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抄録

小児の白血病や悪性腫瘍において,侵襲性真菌感染症がひとたび発症すると難治で予後不良なことが多く,診断と治療の遅れは患者の予後を左右しかねない.小児では早期の確定診断が困難なことが多いため,適切な補助診断法で早期診断を心がける必要がある.また,発症リスクの高い急性白血病治療時や造血幹細胞移植後などでは予防が重要である.治療および予防では目的とする菌種に応じて適切な抗真菌薬を選択すべきである.小児では成人に比べ肝代謝が速いため,トリアゾール系抗真菌薬では体重当たりの至適投与量は成人より高用量が必要である.トリアゾール系抗真菌薬を用いる場合,チトクロムP450(CYP)代謝に関与する薬剤との相互作用に注意を払う.シクロスポリンやタクロリムスは代謝が阻害されるため血中濃度が高値となる.ビンクリスチン,シクロホスファミドやゲムツズマブオゾガマイシンなどの抗腫瘍薬も代謝が抑制されるためその副作用が増強される.それぞれの薬剤の投与開始あるいは中止の際には薬剤相互への影響を考慮すべきである.ボリコナゾールは代謝に関与するCYP2C19に遺伝子多型が存在するためトラフ血中濃度測定によるモニタリングを行う.

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© 2021 日本小児血液・がん学会
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