日本小児血液・がん学会雑誌
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シンポジウム8: ゲノム医療: 小児・AYAがんにおける実装の現状と今後の課題
小児がんのゲノム医療提供体制の現状と課題
加藤 元博
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2021 年 58 巻 5 号 p. 384-387

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抄録

がん細胞に生じているゲノム異常を多数の遺伝子について網羅的に検出するゲノムプロファイリング検査(パネル検査)が診療に実装され,小児がんでも積極的に実施されている.小児がんでは,治療薬剤の標的となるゲノム異常の探索だけでなく,病型診断や予後予測も重要である.小児がんは化学療法への感受性が高いことからも,ゲノム特性に基づいた精密な治療選択は再発率の低下と合併症の最小化に有用であり,小児がんゲノム医療のさらなる充実に大きな期待が寄せられている.また,小児がんの発症者では一定の割合でがん好発素因となる遺伝的背景が検出されることがあり,がんゲノムプロファイリング検査を行う際には,検査前からそのことを適切に理解し,必要なカウンセリングとサーベイランス体制を整えておかなければならない.複雑なゲノム検査の結果を診療に利用するためには,検出されたゲノム異常の意義を判定するエキスパートパネルが必要であり,小児がんの特性に対応可能な施設に依頼する特別対応が認められている.小児がんに対するゲノム医療をさらに発展させるためには,早期相試験などの薬剤到達性の向上と,最適化されたゲノムプロファイリング検査の開発や,人材の育成が重要な課題である.

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© 2021 日本小児血液・がん学会
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