小児歯科学雑誌
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乳歯列と永久歯列の関連性について
第5報 上顎側切歯について
土居 久美子関本 恒夫辻 裕子斉藤 文子大出 リエ子苅部 洋行高橋 美保子牧 志寿子坂井 正彦菊池 進
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1992 年 30 巻 3 号 p. 575-580

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抄録

上顎永久側切歯の叢生状態に着目し,本研究では上顎永久側切歯の排列状態と上顎乳側切歯の排列状態,乳側切歯部歯槽部の大きさ,および乳側切歯の歯軸角との関連性について検討を加えた。
資料は日本歯科大学歯学部小児歯科学教室所蔵の経年資料のうち,歯列が正常な永久歯列に推移した26症例(正常咬合群)と乳歯列が永久歯列に推移した際に上顎両側の側切歯が口蓋側に萌出し逆被蓋となった7症例(逆被蓋咬合群)の経年歯列石膏模型(上顎)を使用した。
1.乳側切歯の排列状態は正常咬合群では乳側切歯が正常に排列しているA型46% ,近心部が舌側に捻転して排列しているE型40%,遠心が舌側に捻転しているD型8%,舌側に転位しているC型6%で,逆被蓋咬合群では,A型22%,C型14% ,E型64%を示し,正常咬合群と逆被咬合群では各型の出現頻度に差がみられた。
2.逆被蓋咬合群は正常咬合群に比べ,乳側切歯部の歯槽基底長径,歯槽基底高径において有意に小さく認められた。
3.逆被蓋咬合群は正常咬合群に比べ,乳側切歯の歯軸角度が小さい傾向がみられた。
以上のように,永久歯列において側切歯が逆被蓋となるような症例では乳歯列期においてすでに形態的な特微がみられ,特に乳側切歯部の歯槽部の大きさと乳側切歯の歯軸角度でその特徴は著明であった。
このことは咬合誘導を行っていく上で,乳歯列期における重要な情報源となると思われた。

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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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