6 歳男児で骨形成不全症(Shields' Type I) に随伴して認められた, 象牙質形成不全症の下顎乳切歯を光学顕微鏡,走査型電子顕微鏡およびX線マイクロアナライザーを用いて観察した.
光顕的にはエナメルー象牙質境付近の象牙質は疎で不規則な細管構造を示し,髄周象牙質に相当する領域では細管構造はほとんど見られず,両者の間には裂隙が存在した.この様な細管構造の不規則性は走査電顕所見でも明らかであった.
X線マイクロアナライザーを用いてCaとPの分布を計測した結果,象牙質形成不全症歯牙の象牙質では正常歯に比較し明らかに低い値を示し,特に,エナメノレ象牙質境にそった25~35μm幅の外套象牙質に相当する部分で極端にその分布が低かった.
今回の観察から,遺伝的障害は主として象牙質形成初期の象牙芽細胞を侵襲し,結果として,特に基質小胞を介しての石灰化の障害や象牙芽細胞の寿命の短命化をもたらしたものと推定される.また,これらの象牙芽細胞の死後はおそらく歯髄由来の未熟な細胞によって残りの不規則な象牙質形成がなされたものと思われる.