農業土木学会論文集
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小型貯水池における水・物質収支
農業用ため池と洪水調整池の事例研究
多田 明夫百濟 昌人田中丸 治哉畑 武志
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2006 年 2006 巻 246 号 p. 891-902

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抄録

農業用ため池 (谷池) と洪水調整池の2種類の小型貯水池を対象に, 水収支と物質収支の検討を行った.水収支については, 山林を主体とする農業用ため池の集水域からは降水量の35%がため池に流入し, 宅地からなる調整池集水域からは降水量の64%が調整池に流入していた.農業用ため池の回転率は年間9.2回 (低水時では4.6回), 調整池の回転率は441回 (低水時では58回) であった.物質収支については, 流入負荷量と流出負荷量の関係を見ると, 両池ともM-アルカリ度と電気伝導度で両者が均衡し, T-COD, D-COD, Chl-aでは流出負荷量の方が大きく, SiO2では流出負荷量がより小さくなった.窒素・リンでは両池で異なる結果が得られた.調整池では窒素の差引排出負荷量 (流出負荷量-流入負荷量) がマイナスとなりリンでプラスであったのに対し, ため池では窒素・リンともにトータル分でプラス, 溶存成分でマイナスとなった.この違いは池の回転率の違いにより生じた, 池内部の植物プランクトンや植物による吸収量の差によりもたらされていると考えられた.

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© 社団法人 農業農村工学会
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