本研究では山形県の紅花の利用によって形作られてきた文化を対象とし,文化の実践の地域愛着への寄与について検討した.その結果,現在の紅花文化は農産物としての栽培だけでなく,観賞用の植栽や料理への利用のように日常的な利用がなされることがわかった.また,本地域での地域愛着は5つの因子によって構成される.文化の実践の地域愛着への寄与について共分散構造分析を実施して検討したところ,紅花の料理への利用や地域行事への参加頻度が地域愛着に寄与することが示唆された.一方,紅花の栽培や植栽は栽培者の意識の違いなどもあり統計的には地域愛着を醸成する可能性を持つが,モデルとしては直接的に寄与しないことが示唆された.その一方で収益を目的とした文化実践は地域愛着に寄与せずむしろ低下させうることも明らかとなった.