農業農村工学会論文集
Online ISSN : 1884-7242
Print ISSN : 1882-2789
ISSN-L : 1882-2789
研究論文
乳牛ふん尿主体のバイオメタン製造プラント導入による温室効果ガス排出削減とその経営収支に関する分析
大久保 天秀島 好昭主藤 祐功近江谷 和彦
著者情報
ジャーナル フリー

2010 年 78 巻 6 号 p. 479-491

詳細
抄録

乳牛ふん尿を主原料とするバイオガスプラントから発生するバイオガスを精製し,そのバイオガス精製メタン(バイオメタン)を地域において一般需要家のエネルギー資源として利用するシステムについて検討を行った.バイオガスプラントの実証運転とバイオメタン製造実験より得られたデータを基礎に,乳牛1,000頭のふん尿処理規模のバイオメタン製造プラントを想定し,線形計画法を用いて,環境性(温室効果ガス排出削減量)の最大と経済性(プラント経営収支)の最大を各目的関数とするプラント運転の最適化を行った.その結果,最適化の目的によりプラント運転方法は異なり,環境性と経済性は互いにトレードオフの関係となったが,経済性を最大とした場合においても環境性を最大とした場合と同程度の温室効果ガス排出削減効果が示された.しかし,いずれの場合もプラント経営収支はマイナスとなり,現状においてプラントの経済的成立は困難と示唆された.プラント経営収支をプラスとするためには,プラント建設費の低減や利子費の減免措置等が必要となる.また,こうしたバイオメタンの地域における利用方法の将来像として,バイオメタンを原燃料とする分散型電源を用いたマイクログリッドシステムを提案した.

著者関連情報
© 2010 公益社団法人 農業農村工学会
前の記事 次の記事
feedback
Top