2019 年 60 巻 9 号 p. 1396-1400
近年,学術論文の成果をより広く共有するために,購読料を論文の著者が支払うことで誰もが購読料を必要とせず閲覧可能にする「オープンアクセス」の選択肢を準備する雑誌が増えている。この仕組みを悪用し,論文の掲載にかかる費用を得ることだけを目的とした,低品質の悪質的な学術雑誌が増加している。このような悪徳雑誌は様々な手段をもって科学者に投稿を促し,適切な査読を行わずに投稿された論文を受理する。その結果,高額な費用が請求されるだけでなく,科学者の評価をむしろ低下させることにつながってしまう。悪徳雑誌が疑われるリストや,悪徳雑誌でないことを示すリストも作成されているが,どちらも完全なものではなく,最も有用なのは該当する領域のコミュニティの中での評判と思われる。意図せずに悪徳雑誌に投稿してしまうことをできる限り減らすためには,悪徳雑誌の手口を知ることが必要である。