2018 年 59 巻 12 号 p. 2561-2566
症例1は57歳男性,C型肝硬変(Child-Pugh B)で肝細胞がん治療中にAPLを発症した。トレチノイン単剤で寛解導入療法を行ったところ分化症候群をきたしたが,ステロイド投与で改善して血液学的寛解を達成した。症例2は50歳男性,C型肝硬変(Child-Pugh B)で生体肝移植準備中にAPLを発症した。トレチノイン単剤で寛解導入療法を行ったところ分化症候群をきたしたが少量ステロイドとアルブミン投与で改善し,血液学的寛解を達成した。2症例ともSanzらのプロトコールに準じて通常量のトレチノインに加えて42~70%アンスラサイクリン投与量で3コース地固め療法を行った。現在維持療法を行っており,1年以上分子生物学的寛解を維持している。APL治療のキードラッグのトレチノインは肝障害に関して類似化合物の毒性から禁忌とされているが,肝硬変症でも肝酵素異常を含めた十分な肝機能評価の上で投与すれば使用可能な症例もある。