臨床血液
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発作性夜間ヘモグロビン尿症の発症機序
村上 良子
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2016 年 57 巻 10 号 p. 1900-1907

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抄録

発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)は後天的に1個あるいは数個の造血幹細胞のX染色体上のPIGA遺伝子に突然変異が起きて,GPI欠損細胞となり,その異常細胞クローンが増加することにより発症する。最近,PIGAの変異ではなく常染色体上の遺伝子PIGTの1つのアレルの遺伝性変異に加えてもう一方のアレルの体細胞突然変異によるPNHが見つかっている。赤血球系においてGPI欠損細胞の割合が増加すると,補体制御因子であるCD59やDAFがGPIアンカー型タンパク質で,これらの異常赤血球上では欠損しているために感染等を契機とした自己の補体の活性化により溶血発作を起こす。即ち溶血性貧血,溶血に伴う深部静脈の血栓症,しばしば併発する骨髄不全がPNHの3主徴である。異常細胞クローンの拡大はPIGAの欠損のみでは起こらず,併発する骨髄不全の環境のもと自己免疫的な攻撃を免れたPIGA欠損クローンが更なる遺伝子変異を受け増殖性を獲得すると考えている。最近の知見をもとに考察する。

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© 2016 一般社団法人 日本血液学会
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