2015 年 56 巻 3 号 p. 246-252
末梢性T細胞リンパ腫(Peripheral T-cell lymphoma, PTCL)に含まれる血管免疫芽球性T細胞リンパ腫(Angioimmunoblastic T-cell lymphoma, AITL)は,濾胞性ヘルパーT細胞に似た形質をもつことから,従来成熟T細胞由来の腫瘍と考えられてきた。 一方,最近の解析結果から,AITLにおいては,「多段階発がん」モデルが提唱されている。比較的未分化な血液細胞に前がん細胞の成立を促すTET2あるいはDNMT3A変異などの変異が生じることで前がん細胞(前リンパ腫細胞)へと進化する。前がん細胞にさらに腫瘍特異的なRHOA遺伝子変異が加わることにより,腫瘍細胞となる。すなはち,前がん変異と腫瘍特異的変異が組み合わさることによって,特異なリンパ腫の形成を促していると考えられる。