2013 年 54 巻 3 号 p. 269-272
症例は61歳女性。右顎下部腫瘤の生検とCT検査結果からびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)病期IIIAと診断された。初回CHOP療法の8日目に行った初回リツキシマブの投与中に,見当識障害,痙攣,意識障害,視覚障害,低ナトリウム血症,血圧上昇が認められた。MRI検査では後方優位の両大脳,両小脳にT2強調,FLAIR画像の高信号を認め,同部位での拡散強調画像では高信号なしの所見を認め,可逆性後頭葉白質脳症(reversible posterior leukoencephalopathy syndrome, RPLS)と診断した。また,低ナトリウム血症の原因は抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(SIADH)であった。血清電解質と血圧の補正に伴い意識は回復し,痙攣出現から40時間後には全ての神経障害は回復した。以後RPLSの再燃なく7回のCHOP療法と7回のリツキシマブ投与を行った。RPLSはDLBCLに対する化学療法の稀な合併症だが,治療中に急性神経症状を呈した場合に考慮する必要がある。