1994 年 35 巻 6 号 p. 598-602
症例:44歳女性。1988年4月発症のAPL(t(15;17), +8, +12の染色体異常あり)。完全寛解(CR)を得たが1989年第1回再発後CR, 1990年4月,2回目の再発(この時はt(15;17)は消失,t(3;13)(q26;q22), +8の染色体異常あり),5月当科入院。VP-16+MIT+BHAC療法によりCRとなるが,その後3回目の再発。11月3日より本人および家族の同意を得てetretinate 40 mg/日を17日間投与したが無効であったため,代わりに11月20日より29日間all-trans retinoic acid(以下ATRA)60 mg/日を投与した。効果は顆粒球増加のみで,十分な分化誘導は起こらなかった(minor response)。この理由として3回目の再発であったこと,t(15;17)が消失していたことが推定された。ATRA投与中12月初めより口腔内腫瘤を認めmyeloblastomaと診断した。なお皮膚乾燥,高トリグリセライド血症,および膵炎の合併がみられた。これらの合併症についてATRAとの因果関係は不明であるが,過去の報告例に乏しく,貴重な症例と思われた。