症例は60歳の中等症血友病Aの男性である。22歳の時,外傷後の腹部血腫にて輸血を受け,40歳の時,大腿血腫を契機に中等症の血友病A, 非A非B型慢性肝炎(後にC型慢性肝炎と診断)と診断された。平成元年1月,腹部不快感で当科を受診し腹部超音波検査にて肝細胞癌を疑われ入院となった。入院後,肝右葉S6領域の肝細胞癌と診断され経カテーテル動脈塞栓療法および肝部分切除術を施行した。その後,同年8月,肝S8に,平成2年8月,肝S6, S8に,および平成4年2月,肝S2, S3に肝細胞癌の再発を認めエタノール局注療法,経カテーテル動脈塞栓療法を施行した。その後,肝細胞癌の再発をみることなく自宅療養をしている。血友病患者におけるC型肝炎ウイルス感染は高率であり,今後,患者の高齢化に伴い肝細胞癌の増加が危惧される。肝細胞癌の早期発見のために腹部超音波検査による定期検査が必要であると思われる。