炎症性腸疾患(IBD)と妊娠・出産の相互関係について,本邦の患者を対象とした報告はいまだ少ない.本研究では,最近10年間に当院で経験したIBD合併妊娠54例・73回(潰瘍性大腸炎38例・49回,クローン病16例・24回)の臨床経過を解析した.解析結果から,妊娠がIBDに与える影響は少ないが,クローン病は活動性が高い状態で妊娠した場合には増悪する可能性が高いと考えられた.一方,IBDが妊娠に与える影響も少ないが,潰瘍性大腸炎活動期妊娠では「妊娠・出産異常」率が高い傾向にあった.IBDでは寛解期妊娠が望ましく,妊娠中には安全性が高い薬剤を用いた治療を継続するべきと考えられた.