日本消化器がん検診学会雑誌
Online ISSN : 2185-1190
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総説
職域におけるがん検診の精度管理に関する課題と解決のための提言
立道 昌幸深井 航太古屋 佑子中澤 祥子
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ジャーナル 認証あり

2024 年 62 巻 3 号 p. 231-239

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抄録

在職者死亡の第一位は悪性新生物であり, 本来ならがん対策は労働者における最重要の健康課題である。一方で, 労働者の健康管理に関する法体系は, 労働安全衛生法に根拠法をもつことから, 業務に関連する疾病が対象となり, 基本がんは私傷病の範囲として対象外となっている。しかし, 近年治療と仕事の両立支援のガイドラインが発出され, 又, 医療保険者に課せられたデータヘルス計画の中で, 保険者と事業者が協同して社員の健康管理を行うという文脈にて, がん検診も職域での健康施策として議論されるようになった。一方で, 従来より職域でのがん検診は福利厚生の一環として実施され, 基本的には機会の提供としてのみであり, 「検診プログラム」として事業評価しようとする意図は全くない。又, がん検診は法定外健診項目として取り扱われることから社内で健康情報, 特にがん検診の判定結果(がんの疑い)などの機微な健康情報の扱いは, 労働法と個人保護法の観点から敬遠され, 精度管理に対して最大の阻害要因となっている。本論文では, 職域でのがん検診の現状と課題を抽出し, がん検診の事業評価としての精度管理ができる仕組みが職域で構築できる可能性について論じる。

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© 2024 一般社団法人 日本消化器がん検診学会
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