日本消化器がん検診学会雑誌
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調査報告
山形県における除菌までを考慮したX線検診構築への取り組みと今後の展望
大泉 晴史名木野 匡武田 弘明
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2023 年 61 巻 6 号 p. 956-969

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抄録

2000年11月Helicobacter pylori(H.pylori)感染消化性潰瘍に対する除菌治療の保険適応と同時に山形県臨床H.pylori研究会を設立し, 県内の除菌治療の普及と標準化を図ると共に, 除菌症例登録制度による胃がん発生抑制効果について8年間の前向き研究を行い, 非除菌群に比し, 除菌群で約40%の胃がん発生抑制効果があることを示した。また2010~2011年山形市医師会と山形大学との共同研究で, ABC分類併用胃X線検診を行い, 胃がん発見がABC分類併用群でX線検診単独群の3倍あり, その有用性が確認された。これらの結果を受けて, 山形市は2017年度からABC分類検査費用を予算化, 除菌までを考慮したABC分類併用胃X線検診を継続事業として導入, 4年間でその有用性とH.pylori感染者の多くが除菌に繋がっていることを再確認した。加えてこれに関して現状を検討したうえで課題を抽出した。また2014年WHO/IARC発出の胃がん予防にH.pylori除菌を推奨するレポート, 2016年2月の厚労省「がん検診実施のための指針」改訂版の公示をうけ, 県医師会消化器検診中央委員会では, 各検診機関から日本消化器がん検診学会が策定した「胃X線検診のための読影判定区分(カテゴリー分類)」におけるカテゴリー2「慢性胃炎」の被険者に対し, 除菌への行動誘導を促すべく, H.pylori感染の可能性と除菌による胃発がん抑制効果の情報と共に結果を通知する体制の整備を進めており, 更なる胃がん死減少に繋げたい考えである。

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© 2023 一般社団法人 日本消化器がん検診学会
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