日本調理科学会大会研究発表要旨集
セッションID: 2C-4
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口頭発表
市販水煮鶏卵のタンパク質組成及び溶解性の解析
*大津 亜衣内藤 宙大早川 浩紀市川 貴子和泉 秀彦
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抄録

【目的】オボムコイド(OM)を除く卵白タンパク質は,加熱により凝集・不溶化することが明らかとなっているが,市販の水煮鶏卵の塩溶性タンパク質組成は明らかではない。そこで,本研究では水煮鶏卵の卵白タンパク質の組成及び溶解性を解析し,生卵及びゆで卵の卵白タンパク質と比較することを目的とした。

【方法】試料には,生卵,ゆで卵(10,20分加熱),及び水煮鶏卵を用い,それぞれの卵白部分を凍結乾燥し使用した。また,水煮鶏卵とともに充填されている1.1% 食塩水(注液)も試料に用いた。各試料から,PBS及び還元剤を含むSDS+urea溶液を用いて溶解性ごとにタンパク質を抽出した。塩溶性画分のタンパク質量はLowry法にて定量した。塩溶性画分と不溶性画分のタンパク質組成は,SDS-PAGE(CBB染色及びPAS染色)及びイムノブロット(オボアルブミン:OVA及びOM)にて解析した。

【結果】Lowry法の結果,水煮鶏卵は,生卵白,ゆで卵白と比較して有意に低い値となった。また,SDS-PAGE(CBB染色)及びイムノブロットの結果,ゆで卵の塩溶性画分からはOMのみが検出され,不溶性画分からはOVAを含む卵白タンパク質が検出された。一方で,水煮鶏卵の塩溶性画分からはいずれの卵白タンパク質も検出されなかった。さらに,不溶性画分からはOVAが検出されたもののOMは検出されなかった。次に,注液中のタンパク質量を測定した結果,5.27 mg/mLであり,CBB染色及びPAS染色によりOMと推定されるタンパク質が検出された。一方で,OM特異的抗体では検出されなかった。以上の結果から,水煮鶏卵中のOMは注液中に溶出したと考えられるが,そのOMも抗原性が低い可能性が示唆された。

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