【目的】高齢になると,咀嚼・嚥下機能が低下し,低栄養のリスクが高まる。そのため,咀嚼・嚥下機能に適した栄養摂取と方法が重要となる。大豆たんぱく質はアミノ酸価が高く,大豆多糖類は骨粗鬆症予防に効果のあるイソフラボンを多く含む水溶性食物繊維である。摂取頻度の高い食パンに大豆たんぱく質および大豆多糖類を添加することで,不足するたんぱく質,食物繊維およびイソフラボンを手軽に補うことができると考えられる。本研究室の先行研究では,大豆たんぱく質・大豆多糖類を混合した食パンは,通常の食パンに比べ,膨化率が低く硬い食パンとなった。しかしながら,官能評価では噛みやすさ,飲み込みやすさ,味,食感の項目で通常の食パンと同様の評価を示した。そこで,本研究では大豆たんぱく質・大豆多糖類混合食パンの物性と嗜好性との関連から食べやすさの検討を行った。
【方法】試料には,強力粉250 gを用いた食パン(C,コントロール)と,そのうちの30 gを大豆たんぱく質(SPI),10 gを大豆多糖類(SPS)に置き換えた食パン(SP)を用いた。食パンの測定項目は,膨化率,水分率測定,外相・内相の表面色測定,テクスチャー測定,貫入試験,摩擦測定および食味試験とした。
【結果】Cと比較し,SPは膨化率が低く,水分率は同程度であった。外相色はL値が高く明度が低下し,内相色はb値が高く黄みが強くなった。また,Cに比べSPはテクスチャー測定においてかたさ(応力)が高く,最大貫入歪0.80における荷重が大きい傾向にあり,咀嚼に力が必要であると示唆された。一方で,初期摩擦係数および平均摩擦係数は小さい傾向にあることから,大豆たんぱく質・大豆多糖類混合食パンの嗜好性に影響を与えている可能性があると考えられた。