日本調理科学会大会研究発表要旨集
2022年度大会(一社)日本調理科学会
セッションID: A-10
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口頭発表
岩手県西和賀産わらび粉の製造工程と品質特性の調査
*晴山 聖一髙橋 明髙橋 医久子伊藤 良仁岩本 佳恵長坂 慶子
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抄録

【目的】岩手県西和賀町では、ワラビ(Pteridium aquilinum L.)が特産品であり、地上部は山菜として販売され、地下部からは澱粉のわらび粉が製造される。わらび粉は、独特な風味と食感が特徴で高級和菓子の原料として使用されるが、地下部の希少性と製造に係る手間から、現存する製造事業者は限られている。また、製造方法について記述している文献はほとんどなく、学術的な調査事例は見当たらない。本研究は、わらび粉の製造工程と品質特性を理化学的に整理し、製造技術の伝承と生産性の向上、西和賀産わらび粉の普及を目的とし、各種の検討を行った。

【方法】材料には、西和賀町で栽培されたワラビの地下部を使用した。地下部は部位別に解体し澱粉含有量を調査した。製造工程は、やまに農産株式会社(岩手県西和賀町)の現工程を実験室スケールで再現することで検証し、各工程に含まれる澱粉含有量を調査することで澱粉の回収状況を整理した。澱粉粘度の測定にはラピッドビスコアナライザー(Perten RVA-TecMaster)を使用し、他産地産わらび粉及び他原料澱粉との粘度特性を比較した。

【結果】ワラビ地下部のうち、澱粉は根茎の内部に含まれていた。太いほど重量あたりの含有量が高い傾向があったが、年次間差があり、生育状況で変化すると考えられた。また、根茎内部には強固な繊維質の組織があり、効率的な製造の妨げとなっていた。現工程では、夾雑物と比較した粒子径と比重の違いを利用して精製するが、分離が不十分で澱粉損失が大きい工程が存在した。RVAによる粘度特性の分析の結果、他産地わらび粉と比べて高い最高粘度、他原料澱粉と比べて低い糊化開始温度を示す傾向があった。

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