主催: (一社)日本調理科学会
会議名: 平成30年度大会(一社)日本調理科学会
開催地: 武庫川女子大学
開催日: 2018/08/30 - 2018/08/31
【目的】 野菜や果物など多くの食品は酸化して退色・褐変すると商品価値が低下するため、美しい色を保たせる目的で抗酸化剤が使用されている。従来、食品の酸化防止剤には亜硫酸塩やBHA、BHTが用いられてきたが、安全性などに問題があり、これらに代わる安価で使いやすい抗酸化剤の開発が望まれている。そこで本研究では、抗酸化活性に優れたアミノ酸の一種で、安全性や汎用性も高いエルゴチオネイン高生産食用きのこのスクリー二ングを行うと共に、食品利用への検討を試みた。
【方法】 エルゴチオネインの生産は、食用きのこの菌糸体をオートクレーブ滅菌後の鰹出し汁液体培地100mlに植菌し25℃、21・42日間の回転振とう培養で行った。先行研究においてスエヒロタケ菌糸体を用いて行ったグルコース[3%]、アミノ酸(メチオニン・システイン・ヒスチジン[各10mM])、酵母エキス[3%]を添加した培地が最も高いエルゴチオネイン量を示したため、同条件のものを添加した。抗酸化活性は化学発光法、エルゴチオネインはHPLCを用いて測定した。
【結果】 最もエルゴチオネインを生成したきのこ菌糸体は42日間回転振とう培養したタモギタケTa-1で、乾燥菌糸体1gあたり0.931mg/gであった。このことからエルゴチオネイン生成に適した食用きのこはタモギタケTa-1であると判断した。また、鰹出し汁液体培地(100ml)からの乾燥菌糸体の回収重量は1.87gであった。よって、液体培地100mlで得られるエルゴチオネイン量は1.74mg/100mlであり、他のきのこよりも多くエルゴチオネインを生成した。また、抗酸化活性はブナシメジBn-2が最も高かったがエルゴチオネイン量は0.213mg/gであり、抗酸化活性にはエルゴチオネイン以外の生成物質が影響したことが示唆される。今後、無細胞抽出液による食品利用への検討を試みる。