日本調理科学会大会研究発表要旨集
平成29年度大会(一社)日本調理科学会
セッションID: 2P-46
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ポスター発表
昭和時代の食用油脂および油脂を用いた料理の実態と変容 -1945~1960-
大橋 きょう子
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キーワード: 昭和時代, 食用油脂, 料理
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抄録

【目的】演者はこれまでに昭和時代20年間における油脂を用いた料理の実態を調査し、その利用法には地域性が認められ、都市部では油脂を用いた洋風料理が出現する一方、農村部では少量の油を用いた和風炒め煮料理が多い傾向であった。戦時下の食糧が困窮した時期には、食材統制に加え食用油脂や熱源の使用量も制限され、油脂を用いた料理は極めて少ない実態を確認した。本研究は先行研究に引き続き、戦後から高度成長期に入るおよそ15年間におけるわが国の食用油脂の利用と料理の変容を明らかにすることを目的とした。
【方法】調査期間は昭和20(1945)~35(1960)年とし、日刊新聞(読売及び朝日)、「栄養と料理」、「奥様手帖」、「NHKきょうの料理」等を用いた。資料に掲載された関連記事を抽出・整理し、油脂の種類・調理法、食べ方等を精査した。
【結果】対象期間に抽出した油脂料理数は、最も少なかった昭和23年前後に比べて35年にはおよそ40倍となり油脂を用いた料理は著しく増加した。戦後数年間と28年以降の食生活には大きな違いがあることが認められた。何れの年も天ぷらを中心とする揚げ物料理が多い一方で、サラダ油を用いたドレッシングやマヨネーズの使用も見られた。油脂の種類及び調理方法は多種多様となり、料理への利用範囲も広くなる傾向が認められた。食用油脂が戦後の一般家庭に次第に浸透する兆しがうかがえ、戦前に多く見られた和風炒め煮料理は洋風煮込み料理へと変化する傾向を示した。戦後15年間の食生活は、戦前までには見られなかった飛躍的な変容が示唆された。この背景には小麦、米、油脂等の自由化、農林省による食用油の消費推進及びサラダ油や天ぷら油の販売などが影響していると考えられる。特に昭和28年のNHK開局以降34年までに主要テレビ5局が開局し、TV料理番組が開始された影響は大きかったと推察された。 (JSPS科研費JP26350104)

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