主催: (一社)日本調理科学会
会議名: 平成29年度大会(一社)日本調理科学会
開催地: お茶の水女子大学
開催日: 2017/08/31 - 2017/09/01
【目的】食肉にはアンジオテンシンⅠ変換酵素(AngiotensinⅠConverting Enzyme)(以下ACE)阻害活性があることが判っている。この活性は食肉中のペプチドに由来し、食肉をタンパク質分解酵素で消化したペプチド混合物を用いた血圧上昇抑制効果等に関する検討などが行われている。しかし、実際に食肉を調理したときのACE阻害活性への影響については報告が見られない。そこで本研究では、様々な調理操作を行った牛肉におけるACE阻害活性への影響について検討を行うことを目的とした。
【方法】試料は牛ランプ肉(岩手県産黒毛和牛)を用いた。調理方法は、湿式加熱としてゆで調理、蒸し調理(加圧・常圧加熱)、乾式加熱として焼き調理(レア・ミディアム・ウェルダン)とした。ACE阻害活性測定は ACE Kit(同仁化学研究所)を使用し、阻害活性単位IC50を1unitとした。各測定値はStat Flax Ver.6.0((株)アーテック)を使用し、一元配置分散分析による統計処理を行った後、Tukeyの多重比較検定を行った。
【結果】各種加熱調理をした肉および溶出肉汁中の総ACE阻害活性は未加熱と比べて損なわれないことが明らかとなった。またスペクトル測定の結果、ゆで調理肉中(30,45,60分)では、260nm付近の吸収ピークが認められた。さらにゆで調理溶出肉汁中(30,45,60分)および焼き調理肉中(ウェルダン)において、400nm付近の吸収ピークが認められた。しかし、蒸し調理ではそれらの傾向は認められなかった。このことから調理方法の違いで生成するACE阻害活性の成分には何らかの違いがあるものと推察された。