2021 年 30 巻 1 号 p. 53-56
症例は80歳男性.腹部鈍的外傷後に右下肢の疼痛,蒼白,冷感が出現し,近医経由で受傷6時間後に当院救急搬送された.右下肢大腿動脈以下脈拍消失,足関節麻痺が出現しており,CTAでは右総~外腸骨動脈閉塞と右浅大腿動脈閉塞を認めた.大腿~大腿動脈バイパスと右浅大腿動脈塞栓摘除術施行し,術後右足部での動脈拍動触知可となった.血行再建6時間後に下肢緊満のため減張切開施行した.術後早期は尿量が得られていたが,第3病日尿量減少とともにBUN 87.7, Cr 7.8, K 5.9となり筋腎代謝症候群(MNMS)と診断し,同日透析開始,5週後透析離脱.筋膜切開部はVAC療法後皮膚移植し治癒.麻痺は徐々に回復し術後5週後歩行可能となり6週後退院した.Rutherford分類区分IIIを呈した腹部鈍的外傷後の腸骨動脈閉塞を経験した.機能も含めて救肢することができたが,遅発性MNMSの発症には注意が必要であった.