2014 年 23 巻 4 号 p. 822-825
要旨:症例は75 歳,男性.喉頭癌に対して喉頭全摘術・永久気管孔造設術,直腸癌に対してハルトマン手術・人工肛門造設術の既往歴がある.高熱,全身倦怠感,食欲低下を主訴に救急搬送され,入院となった.精査で大腸菌を起炎菌とする感染性胸部大動脈瘤と診断された.治療は,抗生剤点滴による感染調節を行い,その後,肋間開胸・人工心肺使用下に感染した胸部大動脈の切除および上行・弓部・下行大動脈の一期的人工血管置換術を施行した.術後16 日間の持続的な胸腔内洗浄・ドレナージ術および6 週間にわたる抗生剤の点滴とその後の内服を継続し,感染は良好に調節された.以後3 年間の経過で感染再燃は認めていない.治療方針,とくに手術方法の決定に苦慮したが,良好な経過を得た.