医療の質・安全学会誌
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Print ISSN : 1881-3658
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原著
事象間時間軸前後関係ネットワークからの事故パターン作成と医療事故未然防止
吉澤 伸介稲積 宏誠
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2019 年 14 巻 3 号 p. 285-298

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抄録

医療現場ではさまざまなタイプの事故が存在するが,多くの事故は,過去に発生した事故との類似性が高い.過去に発生した事故に関する情報の共有が行われ,それらを有効活用することができれば,将来起こる可能性のある医療事故を未然に防ぐことが可能となるはずである.そこで共有すべき情報源としてインシデントレポートに着目し,そこから事故の原因,結果といった情報を機械的に抽出し,そして事象間の時間的な前後関係を利用しネットワーク図を作成した.このネットワーク図から得られる事故の因果関係を活用し事故のパターン化を行った.パターンを利用することにより発生する事象に対する対策や原因を助言してくれるような現場での活用可能なシステムの構築を目指す.前回までの取り組みはインシデントレポートの内容を把握して重要事象を定義.つぎに自然言語処理技術を用いてインシデントレポートの文脈から重要事象を抽出.そして抽出した事象の時間的な制約関係により原因,結果の特定を行った.この関係から事象間時間軸関係性ネットワーク図を作成した.本研究では,このネットワーク図を有効活用し原因の原因あるいは根本原因または結果の結果そして対策等などをネットワーク図から選出する.選出した因果関係から事故のパターン化を実施する.これにより得られた事故パターンから簡便に原因や対策等の抽出が可能となった.この手法を活用し事故の未然防止につなげるものである.

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