人工臓器
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細菌と人工材料との相互作用
塩基性窒素原子末端を有する材料の抗菌活性について
遠藤 善裕
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1987 年 16 巻 4 号 p. 1632-1640

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抄録

第1級アミン, 第3級アミン, および第4級アンモニウム塩を, 共有結合にてポリスチレン繊維に固定した材料の抗菌活性を調べた. 第3級アミン, 第4級アンモニウム塩固定化繊維は, 大腸菌に対して優れた抗菌活性を示したが, 第1級アミン固定化繊維では, 低値であった. 第4級アンモニウム塩固定化繊維のアルキル側鎖と抗菌活性との関係では, C:6やC:8にて最大の抗菌活性を示した. 第3級アミン固定化繊維の抗菌活性は, 通常大腸菌に対し障害作用をもたないdeoxycholateやactinomycin Dにより増強され, 外膜透過性の亢進が示唆された. 逆に, Mg2+や酸性条件下で抗菌活性は抑制され, 細菌との間に, 静電気的作用が関与していると考えられた. 大量の菌と接触させた直後には, 外膜障害の際に認められる多くの突起を有した大腸菌が観察された. 以上より, 第3級アミン固定化繊維は, グラム陰性菌外膜の機能的, ならびに構造的障害を惹起していることが示唆された.

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© 一般社団法人 日本人工臓器学会
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