1986 年 15 巻 3 号 p. 1438-1441
肝細胞は基質材料に接着することによって肝機能を発現することができる細胞である。そこで肝細胞が直接接触する基質材料の設計次第では、逆に肝機能を制御させることも可能であると思われる。現在最も広く用いられている肝細胞固定化材料としてコラーゲンが挙げられるが、他に良好な基質材料はほとんど開発されていない。今回我々は、主鎖骨格がポリスチレンであり側鎖にグルコース、マルトース、ラクトース、およびマルトトリオースを有した合成ポリマーを用いて肝細胞の応答性を検討したところ、肝細胞の接着率が著しく高い合成ポリマーを見出した。このポリマーは糖鎖末端がβ-Dガラクトピラノシル基を有した水溶性ポリマーであり新しい肝細胞固定化用基質として期待される。