人工臓器
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重症三尖弁閉鎖不全に対する右房側生体弁挿入術のドブラ断層による検討
安達 秀雄横手 祐二許 俊鋭高本 真一尾本 良三
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1985 年 14 巻 3 号 p. 1326-1329

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抄録

高度の三尖弁閉鎖不全症に対し, 三尖弁を切除せずに右房側に生体弁を挿入固定する術式がある。この術式の利点は(1)三尖弁complexを温存する(2)刺激伝導系の損傷の心配がない(3)視野か良く容易で早いの3点である。問題点として(1)ぜい弱な右房に人工弁を固定する(2)人工弁が中隔方向を向く(3)右房狭小化の可能性(4)残存三尖弁による障害(5)冠静脈洞の位置等があげられるが, いずれも適応を選べば解決可能と考えられる。この術式の利点を評価して重篤なMS, AR, TRの症例にMVRとこの術式を合わせ実施した。結果はほぼ満足すべきもので, 患者は2カ月後に退院した。ドプラ断層による検討を行なったが, 自然弁と人工弁が重複された特殊な状態の中で, 挿入された人工弁が十分に機能していることが確かめられた。人工弁を通過する血流は層流となり三尖弁を通過して中隔にそい心尖部に向った。この術式は適応を選べば, 症例により有用な術式になりうることがドプラ断層の所見より示唆された。

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© 一般社団法人 日本人工臓器学会
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