2022 年 85 巻 2 号 p. 75-82
これまで3報にわたり筆者は,「温泉地における長期滞在需要を高める取り組み」を調査報告してきた.対象地は国民保養温泉地と休暇村であった.そこでは,滞在施設周辺に存在する自然環境,歴史文化環境,人工環境や施設,移動しての異環境,夜の時間帯,の5つを活かし組み合わせた滞在のためのプログラムづくりの必要性を指摘した.
本報告では,低廉で家族連れでも安心して泊ることができる国民のための宿舎の一つである公営国民宿舎を対象としてプログラムづくりを調査した.公営国民宿舎周辺の外部環境を活かした散策コースの設定等滞在のためのプログラムづくりへの取り組みが行われているかどうかを調査した.
その結果,取り組みはなされてはいるものの,コース設定の数や多様性が不足している状況が見られた.長期滞在需要を高めるためには,既存集落との近接性をも活かした外部環境の活用が求められよう.また,環境省が進める「新・湯治」政策が周知されていない状況も明らかになり,全国の温泉地の活性化のためには,この政策の周知の推進が必要と思われる.