日本胸部疾患学会雑誌
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気管支肺胞洗浄液中に糞線虫及びカリニDNAの増幅を認めた成人T細胞白血病の1例
足立 規子太田 勝康根来 伸夫栗原 直嗣武田 忠直
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1994 年 32 巻 4 号 p. 348-352

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抄録

症例は74歳男性. 紅皮症に対するステロイド治療中に細菌性髄膜炎を発症. 同時期より呼吸不全状態となり, 胸部X線上両肺野にスリガラス陰影を認めたため, 気管支肺胞洗浄 (BAL) 法を施行したところ糞線虫を認めた. さらに, Polymerase chain reaction (PCR) 法を用いたBAL液の検討にてカリニDNAの増幅をも認めたことより, 肺糞線虫症に加えてニューモシスチス・カリニ肺炎 (カリニ肺炎) も合併していると診断した. 当患者に免疫不全の他の原因を検索したところ, ATLA抗体は陰性ながら末梢血細胞中の成人T細胞白血病 (ATL) ウイルスの挿入及びモノクローナルなど増殖が証明された. 以上のことより, 当患者はATLの発症早期の病態であったことも判明した. BAL液中に糞線虫及びカリニDNAの増幅を認めたATLの1症例を経験し, 特にカリニ肺炎の診断においてPCR法が有用となりうると考えられたので報告した.

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