日本胸部疾患学会雑誌
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気管支喘息末梢気道と肺野についての内視鏡的病理形態学的研究
川並 汪一田中 満三井 健司河合 健
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1989 年 27 巻 8 号 p. 925-932

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抄録

病因論的に大気汚染との関係が示唆されている気管支喘息患者合計11名 (男6, 女5, 平均年齢59歳) の右肺B8,9にBF-1.8T細気管支鏡を挿入し胸膜直下約1cmの細気管支領域を観察した. 約1ヵ月後の同患者の同領域にてTBLBを施行し光顕, 電顕的に観察し内視鏡所見と対比した. 内視鏡的に全患者に顕著な分泌液を認めたが, 組織学的には杯細胞増生で裏付けられた. また細気管支壁は浮腫性で7患者に黒緑色色素沈着を認めた. うち3患者の沈着は極めて顕著でありTBLB所見とも一致した. また, 類上皮細胞性微小肉芽腫形成を6患者に認めた. 同肉芽腫構成細胞であるマクロファージ系細胞にはSPLD (Subplasmalemmal linear density) がよく発達し互いに接合していた. 合計9患者の肺胞壁に細気管支立方上皮やII型肺胞上皮の再生と核内封入体形成を認めた. 以上よりこれらの患者は大気汚染により末梢気道とともに肺胞も上皮系を中心に修飾されている事実が明らかとなった.

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