移植
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免疫グロブリン療法保険収載後の末期腎不全治療における医療費の検討
前之園 良一海上 耕平大木 里花子藤原 裕也八木澤 隆史神澤 太一尾本 和也東 治人田邉 一成石田 英樹高木 敏男
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2022 年 57 巻 Supplement 号 p. s324_1

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抄録

2019年12月に抗ドナー抗体陽性腎移植における術前脱感作療法が保険収載されたが、当科ではそれ以前より高感作症例に対して術前の免疫グロブリン療法を施行しており良好な経過を経験してきたが、高額な医療費という制限があるなかで限られた患者にしか行うことが出来なかった。保険収載されて以降はより積極的に使用することが可能になり2020年4月から2021年12月までに22件の高感作症例に対して生体腎移植を施行した。

全て抗ドナー抗体陽性でフローサイトクロスマッチ(FCXM)陰性3名・FCXM B陽性6名・FCXM Tまたは保体依存性細胞障害(CDC) B陽性6名であった。血漿交換を3-6回施行、免疫グロブリンを平均152.1g (2.7g/kg)を投与、術前rituximab 300-500mgを投与した。術後の血清クレアチニンの低下は良好であった。急性抗体関連拒絶、慢性抗体関連拒絶の所見を認めたが、術後1年の腎機能や感染含む合併症などに有意差を認めなかった。

我が国では末期腎不全の加療で血液透析が大幅に占めている、その一方で毎月約40万円かかる高額な治療である側面がある。腎移植では初年度の医療費は検査・手術費用を含め高額になることが知られているが、以降は薬剤費などが大部分を占めるようになり、20-28か月で積算治療費が血液透析より下回る事が知られている。

高感作症例においても十分な脱感作治療を行うことで安全に移植が可能であり、将来の医療費削減に貢献できるものと考える。

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