移植
Online ISSN : 2188-0034
Print ISSN : 0578-7947
ISSN-L : 0578-7947
高感作腎移植レシピエントに対する術前免疫グロブリン製剤投与後に抗HBs抗体陽性となった一例
木村 仁美鈴木 樹里奥村 光一郎小野原 聡別府 寛子石渡 亜由美川西 智子小川 俊江阿部 恭知遠藤 真理子若井 幸子白川 浩希
著者情報
ジャーナル フリー

2022 年 57 巻 Supplement 号 p. s320_2

詳細
抄録

【症例】41歳女性【現病歴】遺伝子検査未施行の遺伝性腎症による末期腎不全に対し、42歳夫をドナーとするO型からB型の血液型不一致の生体腎移植目的に入院。妊娠出産歴3回、術前の免疫学的評価にてクロスマッチ陰性、フローサイトメトリークロスマッチB陽性、ドナー特異的抗HLA抗体陽性であった。術前のHBs・HBe抗原、抗HBc・HBs・HBe抗体、抗HCV抗体は陰性。【経過】術前脱感作としてDFPP 2回、リツキシマブ500mg、IVIg計100g施行。免疫抑制剤は2週間前より TAC、MMF、MPを開始。術直前にMMFが原因と思われる肝障害が出現し、MMF減量し肝障害が改善したため予定通り生体腎移植施行。術後移植腎機能、肝機能は安定していたが、術後9日目に再度肝障害が出現。薬剤性、ウイルス性肝疾患を疑い精査したところ、抗HBs抗体の陽転化を認めたが、その他の肝炎ウイルス検査は陰性であった。術前使用のIVIGは145mIU/Lであり、IVIG療法により受動的に抗HBs抗体を獲得したと考えられた。抗HBs抗体価は1カ月後には16.0 mIU/Lに低下し、肝障害については、MMF減量で改善。【結語】IVIG投与後の予期せぬ肝炎ウイルスの血清学的変化では、受動的抗体移行の可能性を検討すべきである。文献的考察を加えて報告する。

著者関連情報

この記事はクリエイティブ・コモンズ [表示 - 非営利 - 改変禁止 4.0 国際]ライセンスの下に提供されています。
https://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/4.0/deed.ja
前の記事 次の記事
feedback
Top