2022 年 57 巻 Supplement 号 p. s320_2
【症例】41歳女性【現病歴】遺伝子検査未施行の遺伝性腎症による末期腎不全に対し、42歳夫をドナーとするO型からB型の血液型不一致の生体腎移植目的に入院。妊娠出産歴3回、術前の免疫学的評価にてクロスマッチ陰性、フローサイトメトリークロスマッチB陽性、ドナー特異的抗HLA抗体陽性であった。術前のHBs・HBe抗原、抗HBc・HBs・HBe抗体、抗HCV抗体は陰性。【経過】術前脱感作としてDFPP 2回、リツキシマブ500mg、IVIg計100g施行。免疫抑制剤は2週間前より TAC、MMF、MPを開始。術直前にMMFが原因と思われる肝障害が出現し、MMF減量し肝障害が改善したため予定通り生体腎移植施行。術後移植腎機能、肝機能は安定していたが、術後9日目に再度肝障害が出現。薬剤性、ウイルス性肝疾患を疑い精査したところ、抗HBs抗体の陽転化を認めたが、その他の肝炎ウイルス検査は陰性であった。術前使用のIVIGは145mIU/Lであり、IVIG療法により受動的に抗HBs抗体を獲得したと考えられた。抗HBs抗体価は1カ月後には16.0 mIU/Lに低下し、肝障害については、MMF減量で改善。【結語】IVIG投与後の予期せぬ肝炎ウイルスの血清学的変化では、受動的抗体移行の可能性を検討すべきである。文献的考察を加えて報告する。