移植
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アルコール性肝硬変患者に対する肝移植と取り組み
神山 真人長谷川 康尾原 秀明北郷 実阿部 雄太八木 洋松原 健太郎堀 周太郎田中 真之中野 容嶋根 学篠田 昌宏北川 雄光
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2022 年 57 巻 Supplement 号 p. s317_3

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抄録

【背景】肝移植を要する患者の原因としてアルコール性肝硬変が増加している.また,肝移植後の再飲酒は大きな問題である.当院の成績を分析し,現在行っている取り組みを報告する.【方法】対象は,2001年11月から2021年4月に当施設に肝移植目的で紹介されたアルコール性肝硬変の患者.肝移植施行患者33人の背景・再飲酒・長期予後ついて後視的に解析した.【結果】移植患者の年齢(中央値,範囲)は53歳(39-64歳), 性別は男性が22人(66.7%),5年生存率は89.7%であった.再飲酒を7人(21.2%),有害再飲酒を5人(15.2%)認めた.High – Risk alcoholism Relapse Scale (HRAR scale)は再飲酒群で有意に高かった(p=0.013).有害飲酒症例では,飲酒告白時期に前後してAST,ALT,γ-GTPの変動が見られた.有害再飲酒症例では4例(80%)で肝生検が行われており,F2:F3:F4の線維化がそれぞれ2例:1例:1例であった.再飲酒群では年齢が有意に若く(46歳 vs. 53歳,p=0.041),脳死移植で有意に再飲酒率が高かった (66.7% vs. 11.1%,p=0.006).有害再飲酒患者の肝移植後から再飲酒までの期間は,21.9か月 (8.9 -170.0か月)であった.アルコール性肝硬変患者の増加及び再飲酒症例をうけて,精神科・リエゾンナース・移植コーディネーター・消化器内科と合同ミーティングを行い,術前から介入を行っている.【結論】肝移植後の再飲酒をある程度予測することが可能であった.しかしながら,診断および治療には改善の余地があると考えられた.

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