移植
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生体肝移植における予測脾臓容積と門脈圧との相関に関する検討
栗原 健原田 昇利田 賢也森永 哲成冨山 貴大小斉 侑希子冨野 高広吉屋 匠平長尾 吉泰森田 和豊萱島 寛人伊藤 心二吉住 朋晴
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2022 年 57 巻 Supplement 号 p. s316_1

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抄録

【はじめに】 門脈圧亢進症を伴う非代償性肝硬変は根治的治療として肝移植術の適応である。本邦では脳死ドナーが少なく肝移植のほとんどが生体ドナーを用いた生体肝移植である。生体肝移植術における過小グラフト症候群を予防するためには門脈圧のコントロールが必要であり、術中に脾臓摘出術や門脈大循環シャントの処理が行われる。しかしながら、術前に門脈圧を測定することは困難であり、術式の選択は術中の門脈圧によって決定されるのが現状である。今回われわれは、予測脾臓容積を用いて術中の門脈圧が予測しうるかを検討した。【対象】当科で2004年から2021年までに施行した生体肝移植術のうち、急性肝不全の症例と術前に脾臓摘出術もしくは選択的脾動脈塞栓術を行った症例を除く425例を対象とした。予測脾臓容積は術前CTをSynapse Vincentを用いて3D再構成して測定した。予測脾臓容積を含む術前因子と開腹時門脈圧との相関関係を検討した。開腹時門脈圧との相関関係を示した術前因子を用いて最小二乗法にて開腹時門脈圧の予測が可能であるかを検討した。【結果】開腹時門脈圧と有意な相関を示したのは、予測脾臓容積(p<0.001)、術前PT% (p<0.001)、術前血小板数(p=0.004)、術前MELD score(p<0.001)であった。また、門脈大循環シャント有りは無しとの比較において有意に開腹時門脈圧が低値であった(p=0.002)。最小二乗法を用いて開腹時門脈圧を予測した結果、予測脾臓容積(p<0.001)、術前血小板数(p<0.001)、門脈大循環シャント(p<0.001)を用いて予測可能であった(開腹時門脈圧(mmHg)=25.818+0.004×[予測脾臓容積]-0.076×[術前血小板数(104/μL] +2.075×[門脈大循環シャントあれば]、p<0.001、R=0.346)。【結語】生体肝移植術を施行した非代償性肝硬変患者の術前因子を用いて開腹時門脈圧の予測が可能であった。開腹時門脈圧を予測することにより、術前に門脈圧のコントロールを行うための術式選択が可能となることが示唆された。

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