移植
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腹水濃縮還元療法(KM-CART)を用いた肝移植術前管理の有用性
別木 智昭大平 真裕今岡 祐輝中野 亮介坂井 寛谷峰 直樹黒田 慎太郎田原 裕之井手 健太郎小林 剛田中 友加大段 秀樹
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2022 年 57 巻 Supplement 号 p. s314_3

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抄録

【背景】難治性腹水は、活動量低下や食事摂取量低下に伴う低栄養を引き起こし、肝移植術後の予後不良因子とされており、術前の適切な管理が重要である。KM-CARTは従来のCARTと比較して、より安全に大量の腹水処理が可能である。

【目的】肝移植術前の難治性腹水に対する術前管理としてのKM-CARTの有用性をretrospectiveに検討した。

【対象/方法】肝移植術前(肝移植待機症例を含む)にKM-CARTを施行し、腹水コントロールを行った患者7人、37例を対象とし、短期成績について検討した。また、術前KM-CARTを行った6人と単純排液を行った7人で、術前までの血液製剤使用量を比較した。

【結果】KM-CART施行で腹水排液量(mean±SD)は13.3±6.2 L、腹水処理時間は71.5±48.8分であった。還元Alb量は25.4±18.0g、還元IgGは21.0±14.3 gであった。施行前後で尿量は有意に増加し(p= 0.0021)、翌日の夕食摂取量も有意に改善していた(p= 0.0003)。有害事象としては血圧低下(8.1%)、発熱(8.1%)、下肢痙攣(8.1%)が多かった。出血や呼吸苦などもみられたが、致死的な合併症はなかった。術前KM-CART群と単純排液群ではKM-CART群でFFP使用量が有意に少なく(p=0.0435)、Alb製剤使用量も少ない傾向にあった(p=0.153)。

【結論】KM-CARTを行うことで、医療費削減に加え、腹部膨満感の改善、ADLの改善、食事摂取量の増加に繋がり、周術期リハビリの継続、栄養状態の維持といった難治性腹水症例の周術期管理を効果的に行うことができると考える。

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