2022 年 57 巻 Supplement 号 p. s314_1
はじめに:再肝移植症例においては複数回の手術既往により高度癒着を伴うものも多く、手術難度が高くなることも多い。
症例1:34歳女性、原疾患は胆道閉鎖症で、葛西手術、8歳時に生体肝移植の2回の手術既往、また胆管空腸吻合部狭窄に対してPTBDによる拡張術の既往あり。慢性C型肝炎、晩期細胞性拒絶によりグラフト不全となり、29歳時に脳死登録、また巨大脾腎シャントが発達し頻回に肝性脳症を起こすようになったためBRTO施行、33歳時に門脈肺高血圧症を発症、34歳時(初回移植後26年目)に脳死肝移植となった。肝周囲には高度の癒着を認めた。肝下部と肝上部で下大静脈をクランプし、肝と下大静脈の間を剝離しグラフト肝を摘出した。右横隔膜下には結腸が癒着していたため可及的に剝離ののち全肝グラフトをPut-inした。手術時間は13時間45分、出血量は7665g、大きな合併症を起こすこと無く、術後62日目に軽快退院。
症例2:23歳女性、糖原病のため4歳時に生体肝移植、また9歳時に脾摘術の2回の手術既往あり。de novo AIH、また繰り返す肝静脈狭窄により肝機能悪化、23歳時に大量腹水貯留し肝静脈ステント留置を行ったが症状は改善せず、おばをドナーとした生体肝移植を施行。肝周囲には高度の癒着を認めた。肝下部下大静脈およびステントより中枢側で肝上部下大静脈をクランプし、グラフト肝と下大静脈の間を鋭的に切離して肝摘出を行った。手術時間は16時間45分、出血量は3595g、術後消化管出血を認めIVRにより止血した以外は大きな合併症無く、術後45日目に軽快退院。
結語
高度癒着を伴う再肝移植症例2例を経験した。
上記2症例の手術映像を供覧する。