2022 年 57 巻 Supplement 号 p. s312_3
【背景】皮下膵島移植は様々な利点を有するが移植効率が低く、その要因として皮下の低酸素環境が挙げられる。既報では皮下酸素濃度は他の移植部位と同等とされ、酸素濃度の観点から皮下での膵島生着不良を説明できず、これまで皮下酸素濃度が正確に測定されていなかった可能性が懸念される。そこで低侵襲かつ正確に生体内酸素濃度を測定可能な光学式酸素センサーを用いた新規測定法を考案し、その有用性を検証した。
【方法】ラットの皮下及び腎被膜下に光学式センサーを埋め込み、従来とは異なり組織を穿刺せずに酸素濃度を測定した(新規法)。対照群として同じ測定原理の針型センサーを設置した(従来法)。新規法の妥当性を確認するため、酸素供給デバイスをラットの皮下に留置し、デバイスの酸素化の有無による皮下酸素濃度測定を行った。次にデバイスを糖尿病ラットの皮下に留置して皮下膵島移植を行い、経静脈的糖負荷試験により皮下酸素濃度と移植膵島グラフトの関連性を検証した。
【結果】新規法では皮下酸素濃度は腎被膜下よりも有意に低値を示した(p<0.01)。従来法では両部位の測定値は同等であった(p=0.62)。酸素供給デバイスによる酸素化でラットの皮下酸素濃度は高く維持され(p<0.01)、それに伴い有意な耐糖能の改善が示され(p<0.01)、新規測定法の妥当性が確認された。
【結論】新規測定法により、ラットの皮下酸素濃度は腎被膜下よりも極めて低値である事が判明した。