移植
Online ISSN : 2188-0034
Print ISSN : 0578-7947
ISSN-L : 0578-7947
ヒト脂肪由来間葉系幹細胞から肝細胞様細胞の創出-肝不全・代謝性肝疾患に対する肝移植から細胞治療へ
脇 悠平齋藤 裕池本 哲也陳 述海寺奥 大貴山田 眞一郎森根 裕二島田 光生
著者情報
ジャーナル フリー

2022 年 57 巻 Supplement 号 p. s309_1

詳細
抄録

【目的】我々はヒト脂肪由来間葉系幹細胞(ADSC)から機能的細胞を誘導しAMED取得の上新たな細胞移植療法の確立を目指している。今回ADSCからより機能的な肝細胞様細胞(HLC)への分化誘導に成功し、肝不全・代謝性肝疾患モデル動物への効果を検討したため報告する。

【方法】検討1; Tokushima protocol; ヒトADSCを用いて3StepでHLCへの誘導を行った。RCP(Fujifilm)による3次元培養、オベチコール酸(OCA)添加によるHLC機能向上の有無を検討した。検討2; 疾患モデルマウスへの移植; ヌードマウスにCCl4で急性肝障害を誘導し、2D/3D HLCを腎被膜下に移植した。OTC欠損spf-ashマウスにCyA免疫抑制下に2D HLCを腎被膜下に異種移植した。

【結果】検討1; 3D HLCは2D HLCと比較し、各Stepでの特異的遺伝子発現が有意に上昇し、CYP450活性、アンモニア代謝能ともに有意に上昇していた。OCAの追加により、尿素サイクル遺伝子SLC25A1/OTCと尿素産生の上昇を認め、アンモニア代謝能がさらに上昇した。検討2; 急性肝不全モデルにおいて、2D/3D HLC移植群ともに全例生存し、3D HLC移植により肝胆道酵素の改善を認めた。OTC欠損マウスにおいて、ヒトHLC異種移植は、全例生存しグラフトの生着を確認した。また、OTC欠損マウスから単離したADSCはWild typeと比し、形態学的あるいは細胞表面マーカーに差を認めなかった。

【結語】Tokushima Protocolで誘導した3D HLCは、アンモニア代謝機能に関してより機能的なHLCであり、肝不全あるいは代謝性肝疾患患者に対する臓器移植に代わり、新たな細胞治療源になり得る。

著者関連情報

この記事はクリエイティブ・コモンズ [表示 - 非営利 - 改変禁止 4.0 国際]ライセンスの下に提供されています。
https://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/4.0/deed.ja
前の記事 次の記事
feedback
Top