移植
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当県の腎移植の現状からみた地域の移植医療の未来〜働き方改革で移植医不足問題は解決するのか〜
小﨑 浩一小林 仁存米山 智
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2022 年 57 巻 Supplement 号 p. s304_2

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抄録

当院は2006年から献腎移植34例を含む124例の腎移植を行ってきたが、2022年移植医の退職により移植医療が終了した。他の地域の医療機関でもベテラン移植医が退職し移植医療が終了したと聞く。これまで当院では腎移植専門医1名が外科の協力の下腎移植を施行してきた。献腎移植例には、同一ドナーから提供された2腎を同日移植したのが4回あり、うち2回は腎移植専門医1名が、ドナー手術から2腎移植、術後管理を不眠不休で行うという過酷な労働をしてきた。大学病院や大都市の中核病院と異なり、当県のような医師不足地域で、移植医療を継続することの困難さは、以前より我々は日本外科学会などで報告してきた。「労働環境の改善が、若手医師が移植医療に積極的に参画し、ベテラン医師が燃え尽きないために必要」ということであるが、これは医師充足地域にこそ当てはまるが、当県同様医師不足の中で移植医療を行なっている地域では、数少ない情熱のある移植医により地域の移植医療が支えられている。わが国では移植件数の地域偏在化があり当県のような移植数が少ない地域では移植を志す医師が少なく、ベテラン移植医が地域の移植医療を維持してきたが、今後次世代を担う移植医が現れないと地域の移植医療は当院のように崩壊する。従って医師不足・移植の少ない地域では働き方改革を考える前に、移植件数を増加させて、若手医師に移植の魅力を伝え、移植医療を志す医師を増やすことが重要である。

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