2022 年 57 巻 Supplement 号 p. s299_2
【緒言】1997年臓器移植法成立により、本邦において脳死下臓器提供が施行されるようになった。さらに、2010年の臓器移植法改正により、脳死下臓器提供数は増加傾向となり、多くの施設で多臓器採取手術を経験するようになった。脳死下多臓器採取では採取予定臓器の状況により献腎採取の方法が異なる。長崎県における脳死下臓器提供の現状と献腎採取方法のバリエーションについて検討を行った。【対象・方法】長崎県内では1965年以降91例の臓器提供を経験し、そのうち、2010年から現在までに19例の脳死下臓器提供を経験した。19例における多臓器採取における献腎採取方法について検討した。【結果】19例中1例が家族希望により腎採取がなく、18例で腎採取が施行された。小腸採取は19例中1例であった。腎採取があった18例中10例が膵採取・腎採取ともにあり、8例が膵採取なし・腎採取あり、そのうち1例は腎単独採取(胸部臓器なし、腹部腎のみ)であった。すなわち、脳死下献腎採取では、①腹部で肝・膵・腎(+小腸)採取あり、②腹部で膵採取なし、肝・腎採取、③腹部で腎採取のみ、④腎単独採取、のバリエーションがあり、それぞれを経験した。腎臓チームは各採取方法で役割が異なるため、各々に対する準備が必要であった。【結語】脳死下臓器提供における献腎採取は他臓器採取の有無あるいは状況により大きく異なる。バリエーションに応用できる器材の準備と手術手技の確認と習得が重要であると考えられた。