移植
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腎移植後貧血に対してダプロデュスタットを使用した2症例
竹原 知宏縄野 貴明髙井 諭福原 宏樹西田 隼人
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2022 年 57 巻 Supplement 号 p. s289_3

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抄録

症例1は37歳男性。移植前は血液透析を施行しており、ダルベポエチン10μg/週で投与していた。生体腎移植後貧血が進行し、Hb7.3g/dLまで増悪したため、術後17病日にダプロデュスタットを2mg/日で開始し、Hb値に応じて6mg/日まで漸増した。その後鉄欠乏を呈したため移植半年後より鉄補充を開始した所、Hb14.0g/dLまで急激に上昇したためダプロデュスタットを中止した。以降は鉄補充のみで貧血進行なく経過している。

症例2は74歳女性。移植前は血液透析を施行しており、ダルベポエチン15μg/週で投与していた。生体腎移植後貧血が進行し、Hb8.4g/dLまで増悪したため、術後17病日にダプロデュスタット2mg/日、鉄補充を開始した。貧血の改善に伴いダプロデュスタット1mg/日に減量したが、開始7週後にHb12.1g/dLに上昇し、ダプロデュスタットを中止した。しかし、3週後に両側下肢深部静脈血栓症、肺血栓塞栓症を来したため、アピキサバンで加療した。血栓は退縮傾向となり、造影CTでフォローを継続している。

腎性貧血に対するHIF-PH阻害薬の使用では、急激な貧血の改善に伴う血栓塞栓症のリスクが指摘されている。当院で経験した2症例において、腎移植後の貧血に対するダプロデュスタットの有効性は認められたが、非移植例と同様に急激な貧血の改善や、血栓症について注意が必要と考えられた。

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