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脳死下臓器提供事例経験が病棟看護師の負担感に与える影響
長谷川 綾子朝居 朋子田﨑 あゆみ中村 小百合
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2022 年 57 巻 Supplement 号 p. s272_1

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抄録

【目的】本邦では脳死下臓器提供件数が少ないため、看護師の事例対応経験も稀である。事例対応経験のある看護師の看護実践における負担感は報告されているが、事例対応経験の有無による負担感の違いは明らかにされていない。本研究の目的は、事例対応経験が看護師の負担感に与える影響を明らかにすることである。【方法】2015年~2020年に複数回脳死下臓器提供を実施した67施設のうち、協力の得られた34施設の脳死下臓器提供事例発生病棟の看護師873名に対し、無記名自記式質問紙調査を2021年に実施した。【結果】293名から回答を得た(回収率34%、有効回答率100%)。脳死下臓器提供事例対応経験あり61%、なし38%であった。脳死下臓器提供の一連のプロセスにおいて過半数が負担感を抱き、家族の意思決定支援を最も負担に感じていた。事例対応経験のない看護師は、経験がある看護師よりも負担感を抱いていた。①脳死下臓器提供に対する知識・経験不足、②脳死下臓器提供による時間的制約、③日常的に接触の少ないスタッフとの多職種連携が理由として挙げられた。【考察】事例対応経験がない場合、事例発生時の一連の流れをイメージすることができないため負担感が強くなると推測された。実際の事例対応をイメージできる学びの機会の提供と、院内コーディネーターによる専門性の高い知識・スキルの提供で、看護師の負担感が軽減できると考える。

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